ガケ書房の山下と申します。
ひっさしブリのタブーインタブーです。
あんまり久しブリなので、おさらいしておきます。
この企画は、「タブーインタブー」というインタビュー物です。
不定期に京都の狂都人たちに特定の3つの質問をしていきます。
人に言いたいかもしれない事と、人に言いたくないかもしれない事をききます。
①あなたの現在の主たる収入源は何ですか?
②どんな中学2年生でしたか?
③いままで一番の武勇伝を教えてください。
そんな3つです。その心を解説すると、
①は、その人が何者であっても、今は何でメシをくっているのか。
②は、その人の社会的なキャラクターのルーツを探る。(最重要)
③は、上記2つの質問があまり話したくない事かもしれないので最後は
自己アピールの場というか、意外と面と向かって話す機会をもらえない
武勇伝というやつです。
第三者(例えば、読者的観点)の立場から聞く武勇伝は
素直に読めるものです。利害がないから。
そんなです。
第4回のお客様は、カフェ汚点紫(しみむらさき)店主・柏井銀路さんです。
銀路さんは、つぶれた空き缶を収集するアート集団:京都缶々商社の代表でもあり、
伝説の京都のバンド村八分を思わせる「五分礼(ごぶれい)」というバンドのドラマー
でもあります。(Voの方が行方不明になり現在、活動停止中)
しかし、ドラムはなんと和太鼓です。幻のライブを見た時は、スリルにしびれました。
あ・さっそくイキましょう。
①あなたの現在の主たる収入源は何ですか?
銀路(以下銀)「カフェだけでは、とてもやっていけないのでアルバイトしてます」
山下(以下山)「なんのアルバイトでしょうか?」
銀「借金取りです」
山「なんと」
銀「朝5時に起きて、伏見の方まで徴収に行ってます」
山「それはどれぐらいやってるんですか?」
銀「もう2年になります。でももうやめたい。仕事は任侠さんから
もらってるんですけど。やっぱり仕事とはいえ、集金先の本来
何の関係もないオッチャンにテンションあげて怒鳴ったりすんの
しんどい・・・」
山「色々、人間模様がありそうですね・・・」
銀「皆、どうしようもないオッチャンばっかりで・・・。
行くと、”(返済の)もうすぐきざしがあんねん”と泣きを入れてくる。
そんなアテあったらどうせすぐギャンブルで使うくせに・・・。
そうなってくると、業界用語でいうところの(おいこみ)とか
(けつとり)とかをしなあかんようになる。それがツライ・・・・。
実は、僕、心臓も悪いんです。
安定剤とかの薬も毎日こんなに飲んでる・・・」
山「(ポーチ一杯に入った大量の薬を見ながら)
違うバイトに変えられないんですか?」
銀「昔、捕まってる時にお世話になった人からの紹介で仕事を
しているのでなかなかスンナリとは・・・。その人自身は、
すごくいい人なんです。あと、体調的に力仕事が出来なく
なってしまったんでズルズルと」
山「・・・・・・うー」
②どんな中学2年生でしたか?
銀「家の壁に穴を開けてました。僕は、部落の出身でイジメに
あってたんです。だから、柔道・空手に自然と目覚めました。
先輩後輩のタテ社会がキビしくて柔道部の試合では、
いつも喧嘩をウリにいく役割でした」
山「クラスではどんな存在でしたか?」
銀「学校全体が、窓ガラスが一枚もないような学校だったので
坊主で剃り込みが入ってましたけど、そこではそれはフツーでした」
山「誰かを好きになったりは?」
銀「そんな余裕は全くなかった。親父が借金をしていて、
それこそ毎日借金取りが家に来ていた。
家族全体がすさんでいました」
山「・・・因果な感じですね・・・中学時代のエピソードは何かありますか?」
銀「生まれは、大阪のNだったんですけど。引越し先でいじめられて、
喧嘩して、養護学校に入れられました。そのときになぜ自分だけ
そういう施設に行かされるのかが納得できなかった。その時の
事をシオンの「12号室」という歌を聞くたびに思い出します」
③いままで一番の武勇伝を教えてください。
銀「4年前に傷害で捕まったんです。その時僕は、K大学のY
というところで、テント生活していました。ある日、そこでハッパを
やってるという噂が流れて、
警察がそのことを聞き出すために僕を無理矢理に傷害ということにして
逮捕したんです。明らかな別件逮捕でした。釈放されても、警察署を
出たらすぐに違う官署の奴が来て、また別件逮捕。」
山「拘束期間を少しでも長くするという事ですね」
銀「でも僕は、一切、完全黙秘しました。
傷害で逮捕したくせに聞くことはハッパのことばっかりでした」
山「最後はどうなったんですか?」
銀「僕が、完全に釈放されたとき、当然、店(汚点紫)はもう潰れて
いました。でも一番ショックだったのは、守ったはずの皆に
(うそつき)呼ばわりされたことです。警察での出来事を話すと、
”それはおどしか!”と言われたりしました。
僕は、それまでの・・・・いや・・・今現在も含めて、
あんなに人生の内で耐えた事はなかったのに・・・・・・。
それを思うと、今でもくやしいですね」
その後、汚点紫は見事復活しました。
汚点紫は、
民家のような佇まいに、鈍い光を放つ作品や家財道具が不思議と落ち着く
空間です。美味しいメニューに、不定期で行われるイベントが異空間へと
誘ってくれます。一度体験してみてください。
汚点紫(しみむらさき) 京都市北区紫野西御所田町35 tel 0908-143-6886